神戸新聞NEXTより
翔犬社の施設では、年老いたペットが穏やかに過ごす=加東市内
生活環境や医療の改善によってペットの寿命が延びる一方、飼い主が高齢や病気のため世話することができなくなるケースが増えている。こうした中で飼い主に代わり、老いた犬猫を最期まで介護するサービスに取り組む施設に問い合わせが相次いでいる。
昨年9月に施行された改正動物愛護管理法では、飼い主が最期まで世話をする責任が明記され、自治体は受け取りを拒否できるようになった。介護施設の運営者は「行き場をなくしたペットを受け入れる場所が必要」と厳しい表情で話す。
兵庫県内は、全国で最も多い6施設が登録されている。1995年から活動する加東市の「翔犬社(しょうけんしゃ)」には犬30頭、猫60匹前後が暮らす。大半が10歳を超える高齢の犬猫だ。目が見えない、病気がある、認知症などの影響で一晩中鳴き通す…。それぞれが体に問題を抱える。
「飼い主もペットも、急速に高齢化が進んでいると感じる」と上月初代代表。〈長期入院する〉〈飼い主の父が亡くなった〉といった、依頼のメールが日々寄せられる。「できれば最期まで世話を」と返信するが、引き受ける数は年間約160匹を有料で引き受ける。定年後に飼い始め、10年余りたって飼い主もペットも年を取り、引き取りを求めるケースが目立つ。基本的に新しい飼い主を探すが、5歳を超えると、見つけるのは難しくなるという。
日本獣医学会などの統計では、1980年に2・6歳だった飼い犬の平均寿命が2009年には15・1歳になった。飼育数は約1100万頭で、うち半数以上が高齢期とされる7歳以上という。
長崎市のペットホテル「老犬ホーム アリスの家」には、高齢の5頭が生活する。寝たきりになった中大型犬用のバリアフリーの個室5室は常に満杯だ。05年ごろ、高齢になった飼い主から犬を預かったのをきっかけに、これまで20頭ほどを介護し、みとってきた。
「最期まで飼い主と一緒に過ごすことが理想だが、人も犬も高齢化すれば事情が変わる」とセンター長の海士元弘さん(52)。
環境省によると、ペットホテルなどによるサービスのほか、昨年4月1日時点で10都道県、計20施設が犬猫の引き取り、飼い主を探したり、介護などをしたりする施設として登録されている。担当者は「同様の施設の需要はさらに高まる」と予測している。