毎日新聞さんより 2014年08月27日 21時47分(最終更新 09月01日 18時44分)
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金子さん(中央)が引き取り世話している東日本大震災の被災犬「しま」=2014年9月4日午後1時46分、鴇沢哲雄撮影
さいたま市の全盲の男性が連れていた盲導犬が7月末、何者かに刺されけがをした事件で、埼玉県川口市内で造園会社を経営する金子和平さん(67)が4日、100万円を持参して捜査を担当する同県警武南署を訪れ、「犯人逮捕のため懸賞金に使ってほしい」と申し出た。しかし、警察の懸賞金(捜査特別報奨金)制度は寄付金を元手にすることができず、100万円は金子さんが持ち帰った。金子さんは「盲導犬を傷つけるのはぜったいに許せない。早く犯人を捕まえてほしい」と話している。
けがをしたのは盲導犬のラブラドルレトリバー「オスカー」。同署によると、右の腰付近を先のとがったもので数カ所刺されており、器物損壊容疑で捜査している。金子さんは報道を受け「犯人逮捕のため何かできないか」と考えて懸賞金を思いついた。100万円は犬好きの従業員4人も協力して工面した。
従業員らと同署を訪れた金子さんが「社会正義の面からも見過ごせなかった。犯人検挙に使ってほしい」と懸賞金提供を申し出ると、新井重夫副署長は「素晴らしい行為だが、県警本部と相談する」と回答した。
県警刑事総務課によると、寄付を受けて特別報奨金とすることはできないが、寄付希望者が任意の団体を設立すれば懸賞金を出すことは法的に可能。同課は「実例があるので、せっかくの思いを生かせるようアドバイスしたい」としている。
金子さんは大の犬好きで、自宅でビーグル犬を飼うほか、従業員と協力して川口市内の事務所などで、東日本大震災で飼い主を失った「被災犬」2匹の世話をしている。2匹は雄の雑種で「ふく」と「しま」。震災後、福島市内でボランティアらが世話していた600匹の中から引き取った。金子さんは「2匹を連れて帰る時の、ほかの犬の悲鳴のような鳴き声が今も耳に残っている。人間に尽くしている犬たちを大切にしたい」と話した。
【鴇沢哲雄、衛藤達生】