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Channel: 動物との共存を目指して
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アイスブルーの瞳 第111話 哀れで愛おしい、糞観察結果

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連載ものです。
 
ナショナル ジオグラフィック より
 
 
 
ムースの残骸を確認したあと、私は雪上に残されたオオカミたちの足跡を辿ってみた。
 オオカミの足跡というのは、意外にも細く、ウサギかと思うくらいの小さな穴もある。
 しかも雪の深いところなどは、器用に、先頭がつけた足跡を利用するので、頭数に見合う数が残されていない。
 スティーブがニコリと含み笑いをして言った。
「こうしている瞬間も、彼らは僕たちの気配を察知して、どこかの林の影から、息をひそめて、様子を伺っているかもしれないよ」
 私は周りの林を見渡し、耳を澄ましてみると、なんだか姿を見せずに、ひそめた息づかいが聞こえてくるような気がした。
 湖上につけられている痕跡もじっくりと見てみることにした。
 ムースの毛を拾ってみると、毛の周りに霜の結晶が付いていて、パリパリとしていた。
(写真クリックで拡大)
 毛に付着している血も、雪の上にポタポタと落ちたのであろう血痕も、変色せずに鮮やかな色のままで凍っていた。
 それを手に取ってみると、まるで赤の絵の具で作ったカキ氷のようだった。
 しばらくそれを眺めて、再び歩き出すと、私はふと足元に、ある物を見つけた。
 ムニュ~っと出された細長いものが折り重なっている。
「オオカミの糞だ……」 ・・・・
 
 
ムースの糞ならば、コロコロとしたチョコボールのようなものが、バラバラと落ちているものだ。
 私は視力が悪いので、近くに寄らなければ、はっきりと物が見えない。
 しかも辺りが暗くなり始めていたので、なお見えにくく、私はしゃがんで、よーく見てみた。
 ルーペでも持ってくれば良かったと思いながら、私は糞に顔を近づけた。
 よーく見ると、糞が毛羽立っている。
 これまで熊の糞も、ムースやカリブーの糞も、牧場の牛や馬、羊や豚、犬や猫の糞も観察したことがある。
 その経験から言うと、まず黒熊の糞は、草や木の実ばかり食べているせいか、水分が多く、地面に落ちた瞬間にべちゃっと広がったような糞が多い。
 中はベリー類の種だらけだった。
 グリズリーの糞はと言うと、肉食動物らしいド~ン! とした立派なかたまりで、小動物の小さな毛が残っていた。
 牧場の牛たちは、夏の青草を食べている牛に限るが、これまた水分量が多く、地面に落ちたときに円盤状に広がって、乾くとフリスビーのように固まっている。
 馬の糞は、与えられている餌にもよるけれど、大抵は、北海道で捕れる馬糞ウニそのものだ。
 まあ、馬糞ウニのほうが、馬の糞に似ているから名前がついたのだから、馬の糞が、馬糞ウニに似ているという説明はナンセンスなのだけれど、これが一番想像しやすい。
 ウニ特有のトゲトゲは、馬が食べている干草の茎が、消化不良を起こして、そのまま出てくるからだろう。
 
 
羊はというと、反芻して、とことん栄養を濾しとってから排出するので、昔の丸薬を大きくしたようなコロコロしたものを、ぽろぽろと落とす。
 ムースは、それを少し大きくしたようなものだ。
 豚も、餌にもよるが、ほとんど残飯のようなものを食べているので、これが一番、人間の糞に近いと思う。
 ――と、
 一応、人生で遭遇した動物の糞は、すべて観察したことのある私でも、この糞は少し興味深かった。
 糞の内容物のほとんどが、ムースの毛なのである。
 肉を食べているうちに毛が入ってしまったのだろうが、それにしても、糞と毛の割合が酷過ぎる。
 ほとんど、毛しか食べていないのではないだろうかと思うほどに、毛ばかりの糞なのだ。
 肉が消化されて濾されたようなものが、ほとんど無い。
 私は、もっと詳しく見てみようと、未だかつて、ここまで糞に顔を近づけたことがない、というくらいに顔を寄せてみた。
 カチカチに凍っているせいか、ニオイがまったくない。
 糞に霜が下りたのか、それとも、糞をしたときに上がるほかほか湯気が凍って付着したのか、薄い氷の結晶のようなものでコーティングされていて、安全に触ることができそうだった。
 氷の粒が手の体温で解けることを計算に入れれば、短時間なら素手でもいけそうだ。
 私は野球のグローブのようなミトンの手袋を外して、指先で突いてみた。
(写真クリックで拡大)
 
 
 
 
★そうなんですね。。。
アラスカ犬・・・
親分に餌を先に食べられてしまうんだぁ~泣
 

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