BLOGOS(ブロゴス) より
2010(平成22)年の総務省「国勢調査」によると、生涯未婚率を30年前と比較すると、男性は2.6%(1980(昭和55)年)から20.1%(2010年)、女性は4.5%(1980年)から10.6%(2010年)へ上昇しています。また、単身世帯は1980年代から急増し、単身世帯の人口は人口比で13.1%になります。単身世帯は、これからさらに増加傾向となり、2030年の全世帯に占める単身世帯割合は37%になると予想されています。
■「癒し」を求め、ペットを飼う人たち
家で誰かが待ってくれている。そうなると家に早く帰りたくなります。独身は癒しにペットを飼う人も多いでしょう。ペットを飼う最大の目的は何といっても癒し。ただそこにいるだけで気分がやわらいでほっこりしてしまいます。ペットを飼うことは、アニマルセラピーとして、動物とのふれあいや相互作用から生まれる様々な効果が、医療や福祉、教育の現場で活用されているくらいですからその効果は絶大です。また世帯の人数が少なくなるほど「気持ちがやわらぐ(まぎれる)から」との理由からペットを飼育する人の割合が増えています。
ペット可になっている不動産物件も年々増えてきました。以前はペット不可という物件が多かったものの、ペット可のマンションが大幅に増え、中には賃貸物件にもペット飼育可能な物件も増えてきています。ペットを飼う環境も整ってきたことから、独身者にもペットを飼う機会が身近になり、ますます単身世帯でもペットを飼う機会に恵まれることになってきました。
■厳しすぎる?里親になる条件
「ペットを飼いたいな。」そう思ったら何をしますか?まずインターネットのサイトで「里親募集」を探す人も少なくないでしょう。ただし、最近の里親サイトは譲るに際していろんな条件を付けているところがあります。これが結構厳しいのです。
「独身ダメ、男性ダメ」。この条件だけみても理不尽な思いをする人が多いのではないでしょうか。また、さらに所得など、条件がきつく設定している団体もあり、条件だけでいくと、これでは誰も里親になれないのでは?そもそも譲る気があるの?と思える里親サイトもあります。「独身男性不可」の理由は、最近、猫を自分のストレス発散のため、虐待によって何十匹も殺害した等の男性の凶悪犯罪のニュースがあったことを想像してしまいますが、凶悪犯罪というより、どちらかというと別の理由から来ていることだと思います。
■単身世帯が里親に敬遠される理由
1つは働き盛りの世代の特に男性に該当します。一般的に働いている男性は仕事が忙しいと家を空けている時間が多く、そのためペットの世話を疎かにしがちだと想定してなのでしょう。出張の際は、バケツ1杯の水と大量のドライフードを置いていく。自分が不在の時は、部屋をいたずらされないようにケージに閉じ込めておく。こうして長時間の不在を乗り切っている一人暮らしの飼い主さんが多くないでしょうか?もしこれが人間の赤ちゃんだったら間違いなく警察に通報されています。
また独身者は身軽なため引越しする機会も多く、転居先がペットを飼う十分な環境(住居)が見つからず、最後には困ってペットを手放してしまうというケースもあるそうです。そもそも引越しでペットを簡単に手放すような人にペットを飼う資格などありません。
もう1つは孤独死の問題です。ある日飼い主が倒れ、突然死を迎えることになり、その主人の傍らで死んでしまった犬や猫が発見される。こんな悲しい出来事をよく耳にするようになりました。これは何も高齢者に限ったことではありません。親元を離れ、一人暮らしをする比較的若い世代にも孤独死するケースが多々みられるようになっています。
もし飼っているペットより先に亡くなることになったら・・・?子供のころによく読んだ椋鳩十氏の書かれた本の中に「野良犬ルル」というお話があります。おばあちゃんに飼われていた犬のルルがおばあちゃんの死により遺族に引き取られることなく野良犬になる話です。この話はずいぶん昔の童話ですが、昔は行き場のなくなったペットが野良犬、野良猫となってしまうケースがありました。
現代では、野良になるというより、飼い主が亡くなった後、遺族がペットの処分に困って保健所に持ち込むというケースが多くなりました。本来であれば、独身者、高齢者の独り暮らしは静かなため、特に猫や老犬は穏やかな生活を送っている人との愛称がよいはずです。独り身であってもペットに人間以上の愛情を注ぐ人だって多くいます。ペットを飼う条件を人間のうわべだけで判断することは好ましくありません。
■不幸なペットを増やさないためにすべきこと
必要なのは飼うときには独身者や高齢者であることを自覚して、何らかの事態があった時の受け皿を考えておくこと。「ペットショップで目が合った、運命的な出会いだ」といって購入し、自分の都合が悪くなると処分してしまうという犬猫のなんと多いことか。実際、年間20万匹の犬猫が殺傷処分されているのです。今までこういった行き場のないペットの行き先をボランティアや個人で何とかしてきました。しかし、これから高齢化がもっと進み、単身世帯が急増するわけですから、ペットの数も増えるでしょう。やはりその対応策として行政や地域などのサポートが必要となってきます。
ペットなんかに貴重な税金は回せない。そう思う人もいるかもしれません。でもこれはそもそも人間がまいた種なのではないでしょうか?ペットには何の罪もありません。