ナショナル ジオグラフィック日本より
『ワイルドライフフォトグラファー・オブ・ザ・イヤー』をご存じですか? イギリスで50年続く、世界で最も古く、最も権威のあるネイチャー写真賞です。その受賞作品を集めた本ができました。動物写真の黎明期から今日までの歩みが、すべてわかります。この連載では、本に掲載した写真のなかから魅力的な珠玉の写真10枚を紹介します。一枚一枚の写真の何がすごいのかを、順番に見ていきましょう。
第5回 動物の目線で撮った初期の写真
一般に野生動物の目線は人間よりも低いところにあるため、普通に立って撮影すると、どうしても見下ろすアングルになってしまいがちです。そこでカメラと被写体の目線の高さをそろえて撮影すれば、動物に対する愛情や敬意を表現できます。そのことに気づき、動物の目線での撮影手法をいち早く取り入れたのが、フランス・ランティングでした。その後、多くの写真家がこの手法をマネするようになり、今では、地面の近くにつくった隠れ家に潜むなどして撮影する写真家も増えています。
このインパラの写真は、動物の目線で撮られた比較的初期の写真です。水を飲んでいるインパラの目線は、水面ぎりぎり。この時、ランティングは地面に這いつくばって、インパラと目線の高さをそろえました。それによって、ずらりと並んだインパラの姿と、水面に映る姿がシンメトリーとなり、優雅な構図が生まれたのです。横から差し込む、体を金色に染める夕暮れ時の陽光も、見事にとらえられています。