犬の殺処分ゼロを達成
熊本市
熊本市動物愛護センターは2014年度、初めて犬の「殺処分ゼロ」を達成した。引き取る犬や猫の数を減らし、返還・譲渡数を増やす地道な取り組みが実ったものだ。04年度に年間329匹だった犬の殺処分数は年々減少。09年度に1匹まで激減した後、年間数匹から十数匹で推移していた。一貫して動物愛護の取り組みを推進してきた公明党熊本市議団(鈴木弘会長)はこのほど、同センターを訪れ、これまでの取り組みと今後の課題を確認した。
党市議団も後押し
同センターが全国に先駆けて「殺処分ゼロ」をめざした活動を開始したのは02年。数多くの犬や猫を殺処分しなければならない実情に心を痛めていた同センターの職員から、「このままでいいのか」「何とかして生かす道はないのか」との声が上がったのがきっかけだった。
同年、同センターが獣医師会や動物愛護団体、動物取扱業者などに呼び掛けて動物愛護推進協議会を立ち上げた。設立当初は、立場の違いによる意見の衝突も多かったが、月1回の検討会で何時間もかけて徹底的に議論。その結果、少しずつお互いの主張を認め合い、協力して「殺処分ゼロ」をめざす体制ができていった。同協議会の松田光太郎会長は、「皆が『動物が好き』という共通の思いを確認したことで分かり合えた」と振り返る。今では、センターでの譲渡会の日程を張り出しているペットショップもあるという。
市愛護センターと関係団体が協力
センターでは、引き取る犬や猫の数を減らすため、安易に飼育放棄をしようとする飼い主を説得し、飼い続ける方法をアドバイスしたり、新聞の広告を使った新しい飼い主の募集などを促した。また、迷い犬や迷い猫を減らそうと、名前や連絡先を明記した「迷子札」の装着を呼び掛けるキャンペーンを推進協議会と共に展開した。
その結果、犬の収容数は04年度の749匹から14年度の372匹に半減した。特に「引っ越し」や「近隣からの苦情」など、飼い主の身勝手な理由による持ち込みは、271匹から6匹まで減らすことに成功。飼い主への返還率も03年度の29.1%から14年度の60.7%に倍増した。
譲渡を促進するため個体管理を進め、トリマーの嘱託職員を採用するなど、衛生面にも気を配る。譲渡の希望者には事前講習会の受講を義務付け、相性のチェックも入念に行ってきた。譲渡数は年間150~200匹台で推移している。
一方、猫の収容数はここ数年、増加傾向にあり、大きな課題となっている。センターでは、飼い猫の屋内飼育を呼び掛け、交通事故に遭う猫などを減らす取り組みを進める方針だ。センターの村上睦子所長は「殺処分ゼロはあくまでも通過点。動物と人が共生できる社会の実現に向けた取り組みを、今後も進めていく」と語っていた。
党市議団は殺処分ゼロに向けて、動物愛護の取り組みを後押ししてきた。昨年3月、市議団のかねてからの訴えが実り、センター内に「愛護棟」が新設された。同施設は個室型犬舎やトリミング室、治療室などを完備。飼育環境が整備されたことによって、感染症の発生を予防できたことも殺処分ゼロに結び付いた。