青い小鳥さんより
心臓がドキリと鳴る。
20km圏内に入ってすぐのことだった。
それは、2011年3月の原発事故からすぐ
家の中から出ることも出来ず
帰らぬ飼い主さんのことを待ち続けて
壮絶に息絶えていった猫の姿と重なって見えた。
すぐに、幻覚を振り払い、
地震で壊れた窓からでも入ったのだろうか?と
現実に意識が戻る。
家から出てきたところを保護出来るように、
大急ぎで捕獲器を掛け、この場をあとにする。
肌を突き刺す冷たい強風が吹き荒れた今日、
モニタリングポストが示す値は4.568μSv/h。
ここは浪江町居住制限区域、
中学校の敷地内。
双葉町、長期帰還困難区域某所より数値が高い。
再編の線引きがどこだったのか、さっぱり分からない。
近い将来の帰還を目指すというが、この場所に
若い人や子ども達が帰れるんだろうか?
余りの寒さに、もし猫が入っていたら
出来るだけ早く温かい場所に連れ出したいから
時々捕獲器をチェックしながらポイントを回る。
ドッキ~ン
この毛布の引っ張られ感、
また、新種の生き物かも
はじめまして~ラスカルちゃん
見詰め合う、ラスカルとワタシ。
キミも、人間の身勝手が生み出した犠牲者だけど、
ワタシが保護したいのはキミじゃないんだよ。
捕獲器を開けると、猛スピードで逃げてった。
すぐに犬とり名人シェルターに飛び、
捕獲器の洗浄と消毒をしてもらう。
本当はとんだタイムロスだったのだけど、
ラスカルにちょっと癒される。
そして、別の場所では・・・。
フードは空っぽで逃げられたあと。
前回、再会した茶しろちゃんを保護したくて
川沿いに掛けた捕獲器。
あ~あ、今日はついてないのかも・・・。
それでも、まだお昼前だったから、
気を取り直してもう一度掛けてみる。
そして、その場を離れようとクルマに戻ると・・・。
・・・。
とっとこと~
ぱからん、ぱからん
ごはん、ちょうだいな~
もう、ぎゅって抱きしめたい。
鰹の塊をあげそうになったけど、
ここはグッと我慢。
ちょうど、そばに捕獲器をセットしたところだから、
必ず入ってくれると確信してる。
そ知らぬ顔で、アクセルを踏み込み
別のポイントへと向かう。