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アフリカゾウ、3年で10万頭殺される

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アフリカゾウ、3年で10万頭殺される
 2012年、カメルーン北部のブバ・ンジダ(Bouba Ndjidah)国立公園で最大規模の殺戮が行われた。300頭以上のアフリカゾウが、手榴弾やAK-47で武装した密猟者によって捕殺された。 (Photograph by Brent Stirton / National Geographic / Getty Images)
 
 
 
 
新しい調査結果によると、2010年から2012年のわずか3年の間に、10万頭のアフリカゾウが密猟者によって殺されたことが明らかになった。2011年だけで12頭中1頭が殺された計算になる。また、最も被害が深刻な中央アフリカでは10年間で64%の減少となった。

 中国をはじめとするアジア諸国での象牙需要や、押収された象牙の一掃セールが招いた混乱によって、アフリカの闇市場では取引価格が依然として高い状態が続いている。

 コロラド州立大学のジョージ・ウィッテマイヤー(George Wittemyer)氏率いる研究チームは、ワシントン条約(CITES:絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)によって管理されるデータを利用して、今回初めての大規模調査を実施し、密猟によって失われたゾウの頭数を特定した。

 政策当局者がこの調査結果を基に迅速かつ有効な対策を講じ、数十年続く密猟をくいとめることを研究者や保護活動家は期待している。

◆政策当局者をターゲットに

 近年、密猟者はアフリカのいたる所で大量殺戮を繰り広げている。2012年には、カメルーン北部のブバ・ンジダ(Bouba Ndjidah)国立公園で、300頭以上のアフリカゾウが手榴弾やAK-47によって無惨に捕殺された。

 さらに2014年2月、ケニヤで有名だったゾウのトーン・イヤー(Torn Ear)が、密猟者の放った毒矢によって命を奪われている。その3か月後には、ケニヤで最も愛されたサタオ(Satao)も毒矢に倒れ、密猟者は巨大な牙をとるため彼の顔を切断した。

 これらの犯罪行為は、米国が象牙の商業取引を全面禁止するなどの対応を促したものの、依然として捕殺される数が新たに誕生する数を上回っており、密猟は持続不可能なレベルで続いている。

「われわれ研究チームは、政策当局者をターゲットに調査を行いました。正確な数字を提示すれば、早急な対策を講じるため議論せざるを得ないと考えたからです」とウィットマイヤー氏は話す。

◆困難な推計

 2002年、CITESは、捕殺数を把握するためMIKE(ゾウ違法捕殺監視システム)を導入した。MIKEが監視を行う地域のレンジャーは、ゾウの死骸を記録し、密猟か自然死によるものかを特定する。集まったデータから違法捕殺の割合が計算される仕組みだ。

 このプログラムでは、全生息数のおよそ30~40%しか監視されておらず、地域によって監視の度合いが大きく異なるのが欠点としてある。

 ゾウの生息数を把握する際、もう1つ問題がある。アフリカゾウは、数千平方キロもの広大な土地に点在し、数を特定するのに膨大な時間と費用がかかるのだ。

 国際自然保護連合(IUCN)のアフリカゾウ専門家グループ(African Elephant Specialist Group)が2007年に発表した最新の推計によると、アフリカ全土の生息数は47万2000~69万頭とされた。

 アフリカゾウ専門家グループは、継続的に大陸の広い範囲で最新の調査データを集めている。また、グレート・エレファント・センサス(Great Elephant Census)と名付けられた大陸全土にわたる航空調査が現在行われており、2015年中頃に結果が発表される予定だ。

◆数値の特定

 今回研究チームは、アフリカゾウ専門家グループのデータベースから得た最新の生息数を使って、密猟がない場合、毎年3%のゾウが自然死するという数値を導き出した。

 さらに、MIKEデータから得た2010年から2012年の間に捕殺された頭数の割合を当てはめることで、地域別およびアフリカ全土の捕殺数とその割合が計算された。

 研究に参加していない南タンザニア・ゾウ・プロジェクト(Southern Tanzania Elephant Project)のトレヴァー・ジョーンズ(Trevor Jones)氏は、MIKEが示す捕殺数は、航空調査に基づく数値よりも少ないと指摘している。

「生息数データの更新に最良の方法は、航空調査である」と同氏は述べているが、森に棲むゾウは空中から確認することができない。

◆ゾウの減少による影響

 アフリカゾウがこれほどの規模で減少すると、遺伝的多様性が失われ、健全な集団が危険なほど弱体化する可能性がある。

 彼らが動き回ることで森が開かれて防火帯や草原が生まれ、地面を掘ることでほかの動物たちも水にありつくことができ、通った跡には糞が残されて栄養分となる。「大きなガーデナー」とも呼ばれ、木々の多様性を維持する種子の撒布に不可欠な存在だ。したがって、アフリカゾウの減少が生態系に深刻な影響をおよぼすことは明らかである。

 今回の研究結果は、8月19日付で「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌に掲載された。

Brad Scriber for National Geographic News
 

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